2月決算の会社で4半期毎に銀行から試算表の提出が必要な会社で、3月~5月の4半期の粗利益が大きく下がっているが、理由が分らないと言う相談でした。
経理の管理はされており、どんぶり勘定の会社でもなく、規模からいっても経理体制は出来ている会社さんでした。
経理の方は4半期の工事で赤字が出ているような問題は見られず、売上高も前年より微増しているが、粗利益の低下で赤字幅が大きく出ている。とのお話でした。
資料を拝見していて、私の事前の予測は当たってしまいました。
3月以降の仕入、外注等の請求書、前期の売上資料、今期の売上資料等を拝見して確認。
結果、前期の2月末に金額の大きな工事の完成があり、その未払いが今期の製造原価に入っていました。つまり未払いの計上漏れです。(税務調査等では先に利益を出す形なので、余り問題にされない様です)
多くの会社で、2月分の請求書等は工事未払金又は買掛金に計上されますが、3月以降の分は税理士さんの決算に間にあわない、や他の業種と同じように日付で追いかけている処理が多いのですが、工事毎の予算管理、発注管理が出来ていないと今回のような事が起きる訳です。
調査の結果、2月末の大型工事の3月以降の請求分が約2千万判明、その分が期ズレで今期の原価に含まれた訳です。
建設工事では、2月に完成しても、工事の内容、会社の支払体制、下請先の請求書が遅い等の理由で、完成後3ヶ月位迄は支出の確認が必要です。
もっと言わせて頂くと、工事毎の予算管理、業者への発注管理等が出来ていないと、他の業種と違い正しい決算が出来ず、経営成績の数値も間違ってくる訳です。
私の申し上げたい点はしっかりとPR出来ました、有意義な訪問でした。
第15回は決算書の表示方法の改善で同じ税金でも営業利益が増えた決算書のお話です。
専門工事業のA社は年商4億円の会社です。専門工事の会社で鉄屑の売却代金が年間3千万円程有ります。改善前は売却代金を雑収入に計上していました。売上高4億円、売上原価3億2千万円、粗利益8千万円、販売管理費1億円営業損失2千万円、営業外収入の雑収入3千万円、営業外費用5百万円、経常利益5百万円の決算書でした。
営業利益は本業の利益と考えられています。従って営業損失の表示は本業が赤字で営業外利益の計上で経常利益がプラスになった決算書と見られる訳です。
税理士先生にもよりますが、多くの先生は税金の計算が重要で、営業利益は余り重視しない先生がみえますが、銀行のスコアリング、信用保証協会の保証料信用情報会社の評価、経営審査の評点等外部の評価は変わってきます。
今回の改善は税理士さんにお願いして、鉄屑売却代金の3千万を売上の表記にして頂きました。
結果、売上4億3千万円、売上原価3億2千万円、粗利益1億1千万円、
販売管理費1億円、営業利益1千万円、営業外費用5百万円、経常利益5百万円になりました。
同じ経常利益5百万円でも、営業利益が1千万円と営業損失が2千万円では大きく評価が違う訳です。
多少会計学的な観点からは問題があるかもしれませんが、上場企業ではありません。株主は社長一族です。税務署は税金が同じなので文句を言いません。
同様な事例で、年商10億円の土木工事の会社でのお話ですが、安全協力会費を雑収入に計上、安全大会やパトロールの費用は販売管理費に計上されていました。安全協力会費の徴収時のお金は借受金で処理、支出時の安全大会経費等は借受金から支払いに処理を変更しました。
売上高や粗利益は変わりませんが、販売管理費が400万減り営業利益も400万増加した事例です。安全協力会費の徴収目的に順じた合理的な処理方法だと思います。厳しい状況の中少しの処理改善で利益表示が大きくなる事例です。
決算書は会社の通信簿です。経営者は税理士さん任せではなく大いに興味をもって決算書を重視すべきだと思います。
損益計算書の5つの利益について簡単にご説明します。
売上総利益(粗利益)売上高から売上原価を引いて出された1年間の粗利益集計
営業利益 売上総利益から販売管理費を引いて出された商売(本業)の儲け
経常利益 営業利益に営業外損益を加減して出された利益
税引前当期利益 経常利益に特別損益を加減して出された利益
当期利益 税引前当期利益から税金を引いて出された利益
以上が損益計算書にある5つの利益の説明です。
次に利益を見る視点についてご説明します。
☆大雑把に、どれだけの粗利があるか、知りたい!
売上総利益を見る(粗利益率を見る)
☆商売でどれだけの儲けがあるか知りたい!
営業利益を見る(売上総利益―販売管理費)
☆会社が経営的にどれだけの利益が出せるのか、会社の利益獲得能力を知りたい!
経常利益を見る(営業利益+営業外収益―営業外費用)
☆資本家の立場として経営者の能力を見極めたい!
当期利益を見る(税引前当期利益―税金)
会社の利益と言っても、5つの利益の表示がある。貴社の決算書も建設業の場合、年度終了届の閲覧等で公開されている訳です。
外部の評価を得られる、見映えの良い決算書を作るように税理士さんにご相談されたら如何でしょうか?
株式会社アイユートの服部がお届けいたします。脱!どんぶり勘定を実践した会社様の様子をお知らせする事で、少しでも皆様方の経営改善のお役に立てればと発行させて頂きます。
第11回は前回に続いて限界利益額(損益分岐点売上)についてご説明させて頂きます。(NO.10を一緒にご覧下さい)
D社は年商6億円の専門工事とリフォーム工事の部門をもつ建設業です。前回は一般的な限界利益をご説明させて頂きました。今回は建設業に限定した決算書では解らない限界利益のご説明をさせて頂きます。
売上 |
比例原価 |
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限界 |
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固定費 |
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赤字 |
工事別集計をした完成工事原価は4.74億(粗利率21%)
固定原価0.26億の内訳が管理した過程で見えてきました。
制度会計に捉われなければ、限界利益は、
6億-4.74億=1.26億となり、損益分岐点売上は、赤字分の0.1億を
プラスして1.36億になります。
1.36億÷21%≒6.48億となります。
(前号でご説明の制度会計では6.6億)
① 固定原価の内訳をD社の事例でご説明します。(0.26億の内訳)
② 上図から利益感度(利益確保の為の4つの方法を分析)努力要点をご説明
③ 上図から目標利益の設定(年度利益計画)の立て方をご説明します。
④更に限界利益の目標設定 部門別(新築、リフォーム、元請、下請) 顧客別等
の設定についてD社の事例でご説明します。
固定原価の内訳を精査しました。結果大きく3つに分類されます。1つは土場の家賃、重機の減価償却費で1千万、前期工事の未払金が今期に支払された分が1千万、未成工事支出金の間接配賦額の差額が6百万(NO4参照)計2600万家賃他の1千万は完全に固定費に含まれ、前期の未払いは把握出来ない会社が非常に多く実行予算⇒発注書が出て管理されれば可能です。又未成工事支出金の間接配賦額は税理士さんによって計上方法が異なり、経営者は当期利益の変動要因でもあり、計算方法に興味を持って頂きたい。(1千万も利益が変動する理由に理解が必要)ともかく0.26億の内訳が判明されました。
2つ目の利益感度分析の説明をさせて頂きます。赤字の0.1億を0にする為の努力要点です。①固定費を0.1億下げる1.36÷1.26=1.08つまり8%の経費ダウンが必要です。②原価を下げた場合4.64÷4.74=0.979つまり2.1%の原価低減が出来れば赤字0です。③売上値引き6÷6.1=0.984つまり1.6%の値引きを防ぐ(又は値良く売る)事が出来れば赤字は0です。④売上は6.48÷6=1.08つまり8%の売上アップが出来れば赤字0です。利益感度順に並べると①売上値引き1.6%②原価低減2.1%③固定費低減8%売上アップ8%が各々収支0にする為の条件です。ここで言える事は銀行等がすぐに固定費を下げろ、売上上げろと注意頂きますが、努力要点としては、値良く売って、工事費を安くする方がはるかに効果が高い事です。社員の意識(交渉力、原価知識)計数管理の仕組み等に注力した方が利益が上がる事です。
3つ目の年度目標利益をD社の例で説明します。赤字1千万から来期は黒字1千万の目標設定をしました。固定費は同じと考えます。売上高も同じです。粗利益率を3.3%アップする事を目標にしました。(努力要点①と②に絞った)
6億X24.3%=1.46億(粗利益額)-1.36億(固定費)=0.1億(目標利益)
4つ目は目標利益を算出する為の個別目標の設定です。D社では下請工事の専門工事と元請工事のリフォーム工事が混在しています。前期は下請4億X18%=0.72億、元請2億X27%=0.54億合計限界利益は1.26億でした。値引き要請の多い下請工事の比率を減らし、リフォーム部門を少し増加と伴に原価の低減策(実行予算と発注管理)目標設定で、1.26億を1.46億に限界利益額を獲得する目標を設定しました。
下請3.4億X20%=0.68億、元請2.6億X30%=0.78億、合計1.46億の限界利益額の獲得です。結果受注条件の厳しい顧客先の受注を絞り(0.6億受注ダウン)しても利益率20%の確保を目指し、リフォーム工事の受注を増加させ原価も専門工事と同様の管理を実施して低減を図る目標に社員一同邁進して、月々のチェツクをして絵に描いた餅にならない様進んでいます。
結論です。利益改善は売上アップと固定費削減だけではありません。D社の事例で、会社を見える化する事で、リスク少なく、効率の良い方向に努力の力点を向ける事で、痛い思いも少なく経営改善が図れる事をご参考にして下さい。 |
アイユートはD社の様な多くの改善事例を中小建設業の経営者様に提供して、経営改善の補佐役として活動しています。是非ご相談下さい
株式会社アイユートの服部がお届けいたします。脱!どんぶり勘定を実践した会社様の様子をお知らせする事で、少しでも皆様方の経営改善のお役に立てればと発行させて頂きます。
第10回は限界利益額(損益分岐点売上)についてご説明させて頂きます。
D社は年商6億円の専門工事とリフォーム工事の部門をもつ建設業です。
まずは限界利益についてご説明致します。
限界利益 |
簡単に言うと粗利益額の事です。
D社の社長は決算が終了して、税理士さんからお話を聞きました。
前期の限界利益は1億円です。固定費が1億1千万円ですから営業利益で1千万の赤字です。来期は固定費を1千万削減するか粗利益率が16.67%ですので、約6千万円売上アップが必要です。
売上 |
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限界 |
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赤字 |
上図のような形となります。
固定費を0.1億削減すれば、限界利益=固定費となるため
営業利益は0となります。粗利益1億÷売上6億=16.67%の粗利益率です。売上0.6億アップとなると、6.6億×16.67%≒1.1億円となります。損益分岐点売上は1.1億÷16.67%≒6.6億となり、6.6億の売上で収支0となります。
つまり、売上がこれより上回れば黒字となり逆に下回れば赤字となるわけです。
販売業など利益率が概ね変動のない業種であれば、お話の通りですが、建設業の場合は、全くあてはまりません。理由の最大原因は決算書の原価報告書では勘定科目別(材料仕入、外注、設計費、給与等)に計上されます。全部原価計算 (フルコスト)で税務申告の決算書は作成されているからです。私は原価を比例原価(受注した工事を施工するために掛かる原価=ダイレクトコスト)と固定原価(売上が無くても掛かる原価)土場の家賃、ユンボ等資産の減価償却費等原価報告書の中身を分離して管理する方法をD社にも導入致しました。つまり固定的原価は販売管理費と同じく固定費として、経営上管理すべきと考えます。
もう一つの理由は、仕事の種類、受注環境によって粗利益率の変動が激しい業種だからです。元請と下請等利益率の違う仕事を混在して売上がある為受注比率によって大きく年度毎に変動します。下図をご参照下さい。
売上 |
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限界 |
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固定費 |
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赤字 |
工事別集計をした完成工事原価は4.74億(粗利率21%)固定原価0.26億の内訳が管理した過程で見えてきました。 (詳細は次号でご説明します)制度会計に捉われなければ、限界利益は、6億-4.74億=1.26億となり、損益分岐点売上は、赤字分の0.1億をプラスして1.36億になります。1.36億÷21%≒6.48億となります。
この図だけでは改善出来ません改善の入口にたどりついただけです。次号では、
アイユートは会社の見える化を図り、中小建設業の最重要な儲けるための会計を実践して経営の補佐役に徹したいと思っています。
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